ヒトは偉いか?

ヒトは高度な文明を築き上げ、高度な科学技術を開発し、素晴らしい文化資産を遺しています

このことは、ハラリ教授が言うところの「フィクションを信じる力」や、人々と協力し合う社会性というものが寄与しているのでしょうが、一方で地震や津波のような自然災害や昨今の新型コロナウイルスの脅威などに対応できずに右往左往している一面も持ち合わせています

にもかかわらず私たちヒトは地球を我が物のように使い、生物界の頂点に立っているような振る舞いをみせて偉そうにしておりますが、「ヒトはそれほどに優れている生物であるのだろうか」と考えさせられる気づきがありましたのでご紹介したいと思います

それは生物学博士である更科功先生が書いた著書「若い読者に贈る美しい生物学講義」を読んでのことです

トカゲの進化

この本の中に「トカゲやヒトより優れている」という章があります

トカゲのような爬虫類や鳥類は、哺乳類より陸上生活をする上で優れた進化をしているそうです

私たちを含むすべての陸上生物の祖先は海にいた魚ですが、この魚が陸上生活に適応していく進化は以下の段階を踏むのだそうです

  1. アンモニアを尿素に作りかえる進化
  2. 卵を乾燥させない羊膜卵への進化
  3. 尿素を尿酸へ作りかえる進化

魚は古くなったタンパク質を分解するときに発生する有毒なアンモニアをえらを通して水中に捨てることができますが、陸上に上がったときに有毒なアンモニアを毒性の低い尿素に作りかえ、水と一緒に捨てられるように進化を遂げたのが、上記の1.です

カエルなどは水中に卵を産んで、卵を乾燥させないようにしますが、水辺より遠くで暮らすために羊膜で作った袋に水をためて胚を入れ、卵を乾燥させないように進化したのが、2.です

尿素を排出するにはたくさんの水が必要なのですが、尿素ほどに水を必要とせずに排出できる尿酸に作りかえるように進化を遂げたのが、上記3.です

ヒトは上記の2.までしか進化しておらず、爬虫類や鳥類は3.まで進化したとのことです

「陸上生活に適応」という条件がつきますが、このようにしてみるとヒトよりトカゲの方が優れているというのが更科先生の指摘です

色々なモノの見方でこの世の中を見ると新たな気づきがあるものです

生物学の専門知識をもって人々にその気づきを与えてくれる更科先生は私にとって楽しいヒトです