カウンセリングで有名な国分康孝さんの著書「チームワークの心理学」には、国分さんの実体験に基づき、チームワークの五原則を紹介しています

また、こちらの記事で、山口裕幸さんの「チームワークの概念図」を紹介しました

この概念図はチームワークを行動面と心理面を包括した、分かりやすいモデルとなっています

今日は、このモデルに国分さんの五原則を当てはめてみて、このモデルの理解をさらに深めたいと思います

余談ですが、このお二人の著書名は偶然にもおなじ「チームワークの心理学」となっています

チームワークの五原則

それではここから国分さんの五原則をご紹介し、山口さんのモデルに当てはめて考えてみます

第一原則「私心を去れ」

自己顕示欲を断念して黙々と自分の任務に邁進することである

チームワークとは自分の属する集団の目標達成のために、各自が黙々と自分の任務を遂行している状況のことなので、メンバーは私心を忘れて自分の任務に専念しなさいと国分先生は教えています

自分が目立ちたいとか、自分の功績を認めて欲しいとかの私心はチームワークには不要であり、チームで仕事をすると決めた瞬間から自分の影は消えていると考えるのがよいとも教えています

モデルに当てはめると「チームの指向性」で達成すべきチームの目標を確認したら、チーム活動においては私心を忘れるよう行動することになります

また「フィードバック」において、第一原則が守られているか自己確認を行います

第二原則「仕事を作れ」

この集団目標達成のために自分は何ができるか、何がしたいか、何をすべきかを考え、自分の役割を自分で探せ

国分先生は、自己顕示欲を断念すると、チームワークは個人にとって損するような印象を与えるが、その見返りとしてチームの中にアイデンティティ(自分の居場所)を獲得できると教えます

組織の中で自分の居場所が見つからないというのは、何とも嫌な感じがします

自分で仕事を作るように意識すると、自分の居場所が獲得でき、チームへの貢献を実感することができます

モデルにおいては、「チームの指向性」で自分の役割が与えられますが、「フィードバック」で他のメンバーの負荷に偏りがあることを知ったり、当初決めた役割では漏れる作業の存在が明らかになり、「支援」のプロセスでその作業を手助けすることができます

その「支援」を通して、「相互調整」のプロセスで、自分の仕事を作り、チームの中で公認されるようになると、チームの中にアイデンティティを獲得できるようになります

第三原則「雑談をいとうな」

チームワークには役割遂行とコミュニケーションが不可欠である
雑談によりコミュニケーションのミスを防ぎ、意志の統一を測ることができる

国分先生は、テクノロジーの発達が雑談の機会を奪いつつあると指摘し、お互いの状況を絶えず知り合っておくための雑談が必要であると教えています

モデルにおいては、「コミュニケーション」がその役割を担っています

第四原則「権限と責任の認識」

自分は何をすることが公認されているか、何をすると出しゃばりになるかを知っておくこと
その上で、自分は何を為すべきで、何を為すべきでないかを自覚しておくこと

その人は良かれと思ってやっていることでも、リーダの許可を得ずにほかのメンバーの責任を肩代わりし、またリーダがその行為を黙認するようなことが続くと、チームの中で権限と責任の所在がぼやけます

モデルにおいては、「モニタリング」の結果、進捗のはかばかしくないメンバーや過剰に負荷がかかっているメンバーを見つけたら、「支援」のプロセスで手助けを行います

その結果、メンバーが取るべき行動や役割に一定の変化が起きるので、「相互調整」のプロセスで調整を行います

国分先生の第四原則はこれらのプロセスで拘束を与えるものと考えられます

第二原則の説明の中で、自分の仕事を作るきっかけとしての「支援」をお話ししましたが、その際は第四原則にも留意することが大切なことが分かります

また、この第四原則は、上記のことに限らず、「チームの指向性」にも関わることと思われます

チームの目標を達成する上で、自分の与えられた権限と責任において、自分は何を為すべきか、何を為すべきでないかを自覚し、自分の意気込みや態度を定めます

さらには「チームのリーダシップ」で、他のメンバーに働きかけることもできるでしょう

第五原則「構成メンバーの安定度」

グループに新しいメンバーを入れるときは、事前に全員の了承を取り付けること
新メンバーの役割(権限と責任)を決めておくこと

チームメンバーはいつまでも同じとは限りません

新人が入ってくることありますし、チームのミッションが変わって、新たなメンバーが補強されることもあります

そのような場合、モデルでは、「チームの指向性」と「チームのリーダーシップ」で、新しいメンバーを交えたチーム作りが行われます

国分先生の第五原則はその際に使われることとなります

国分先生は、新しくメンバーに加わる人に対してもアドバイスを与えています

元々そのチームにいるメンバーにとって、新しいメンバーは未知の存在です

「どんな人なんだろうか?」「我々の仕事にどんな影響を及ぼすだろうか?」といった不安がメンバーの中に芽生えます

なので、新しいメンバーに入る人は、早いうちからメンバー一人ひとりにコンタクトを取って、「自分はこんな人間です」と自己開示をし、メンバーの不安を解消するように心がけるとよいと、国分先生は助言を与えています

チームリーダの皆様へ

いかがでしたでしょうか

国分先生の五原則は、我々にとっても馴染みのある内容です

この五原則を山口先生のモデルに当てはめて考えることで、さらにモデルに対する理解が深まったと思います

チームリーダを担っている方は、このモデルを念頭において、ご自身のチーム作りと運営をされると良いと思います