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前回は課長対話学習会がSECIモデルに基づく学習方法であることをお話ししました

ここではこの学習方法が課長対話学習会以外にも応用できることについてお話しします

学習の4段階

株式会社アイティ・アシストの小野村先生に「学習には4つの段階がある」と教えてもらったことがありました(下図)

「知らない」段階にある人が、「できる」ようになるには、3つの段階を経る必要があって、それには「学習」、「思考」、「訓練」が必要だと説明しています

講義を受けたり、本を読んだぐらいでは、まだ「知る」のレベルであり、そこから「思考」をすることで「そういうことだったのか」という「わかる」のレベルとなり、そのあとに何度も実践するという「訓練」することで、やっと「できる」というレベルになるのです

それ以来、人に教えるときは、この学習の4段階を念頭においてカリキュラムを組み立てるようにしています

SECIモデルとの関係

課長対話学習会はSECIモデルに基づく学習法であるとお話ししましたが、上述の学習の4段階の中でどのように位置づけられるのでしょうか

それを下図で説明します

課長対話学習会では、ディスクロージャで課長のもつ体験の中から暗黙知を共有し、メンタリングで気づきを言語化して形式知を獲得し、課長同士の対話を重ねて形式知を組み合わせたり、再配置したりして新たな体系的な形式知に変換します

この形式知を職場に持ち帰って実践し、新たな暗黙知を獲得していきます

これは、上図のように「思考」と「訓練」の間で暗黙知と形式知の相互作用が繰り返されていることが分かります

このように考えると、「できる」状態になるには、「思考」から「訓練」への一方通行ではなく、「思考」と「訓練」間の循環が行われ、ある段階になって「できる」と自覚するようになると考えるのが妥当だと思います

他の分野での応用

課長対話学習会は、似たような経験を持つ課長同士が集まって、互いの経験を紹介し、「自分がこの立場だったらこう判断する」と思考し、語ることで、自らの経験の質量を豊かにし、学びの量を増やしていきます

このようにして参加している課長同士が先生になったり、生徒になったりして、相互にメンタリングを行っているのです

このような複数の人々が相互にメンタリングする学習法は稀で、先生と生徒が1対1となって学ぶ方法が一般的でしょう

例えば、ベテランのプロジェクトマネージャが新米を育成するといったケースです

このケースでSECIモデルを使うと、ベテランのプロジェクトマネージャは新米の暗黙知と形式知の相互作用を支援する形で新米の育成に関与します

コーチングのスタイルに近くなります

(コーチングの基本姿勢と基本技法はこちらの記事を参照して下さい)

ベテランのプロジェクトマネージャが新米と対話することで、この学習の4段階の「思考」で必要な気づきを与え、「訓練」に必要な動機を与え、その実践を振り返る機会を与えることで「思考」と「訓練」間の循環を作り、最終段階の「できる」に至るまでその循環を繰り返します

次回は、この課長対話学習会を「組織風土改革の中でどのように使うか」についてお話しします(つづく)