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澤田瞳子さんの「輝山」を読みました

仲間を思いやる姿に泣けるところあり、謀略に立ち向かう行動に胸のすくところありと、幾重もの美味しい読了感を読者に与えてくれる作品でした

作品の構成

江戸時代の石見銀山で働く人々の六つの物語からなる作品です

物語は其々で完結していますが、登場人物は共通しています

また六つの物語を通じて、岩田代官に忍び寄る謀略の解き明かしが中間である金吾によって語られ、六つ目でそれが明らかになっていきます

この構成が読者に「どうなっていくのだろう?」という没入感を抱かせつつ、話が展開されていくため、飽きがきません

あっという間に読み終えてしまいました

心に残ったこと

石見銀山で鉱石採掘にあたる男たちは、30歳を過ぎると、10人のうち9人までが死に至るという胸の病に罹ります

そんな堀子の一人である与平次は、決まりきった死を前にしても、自分より他者に手を差し伸べようとします

なぜなら、不治の病に罹る運命であったとしても、その人は未来永劫いつまでも人の胸の中で生き続けると信じているからです

そんな与平次の行いを見ていた金吾は、彼の行いの痕跡が世に残る限り、彼はこの先もこの世に生き続けるだろうと考え、彼の行いに手を貸します

人の正しい生き方を教えられ、そんな人でありたいと思わせる作品でした

石見銀山で働く堀子たちの人生は過酷です

それでも石見銀山には与平次のような人々の命の輝きを永遠に宿し続けたのです