前回、役職定年や雇用延長などで第一線を退いた中高齢者は、その現状を受け入れられないと会社の中で楽しく働けないことに触れました

引き続き、このような働く人たちを対象にして、そういう方でも会社で楽しく働くことを考えてみたいと思います

地位財と非地位財

経済学者のロバート・フランクは、他者との比較によって価値が生まれ満足を得られるものを地位財、他者との比較ではなくそれ自体に価値があり、喜びに繋がる財を非地位財に整理しました

地位財の具体例は、所得や貯蓄などの金、家や装飾品などのモノ、役職などの社会的地位であり、いずれも他者との比較が容易なものです

非地位財の具体例は、家族との愛情や自主性といった心に関するもの、自由、社会への帰属意識や住環境などの安全に関わるもの、自分や家族の健康といったものであり、他者とは関係なく得られるものです

地位財はそれを得たときは満足しますが、さらに「もっともっと」となり幸福が持続せず、際限がありません

一方の非地位財による幸福は一度得られると幸福が持続するものです

役職定年や定年で失うものは

ロバート・フランクは満足や喜びの幸福が得られるものを地位財と非地位財に整理しました

ここで考えたいのが、役職定年や定年で失ったものはどちらに属するものであるかということです

失ったものは、役職、給与減額による金、役職者専用の机、自分の机の位置などであり、いずれも他者との比較によって容易に価値が分かる地位財に属するものです

役職定年にならない経営幹部を除くすべての人が、本人の意志に関係なく、決められた年齢でこれらの地位財を強制的に失います

地位財を失うと

この地位財を失った社員の一部の人たちはニーチェがいうところのルサンチマンを抱えて苦しみます

ルサンチマンとは被支配者あるいは弱者が,支配者や強者に対してため込んでいる憎悪やねたみのことです

この場合ですと、ルサンチマンは「自分が失った地位財を持っている人たちに対する増悪やねたみ」となるでしょう

ニーチェはルサンチマンを抱えた人はルサンチマンの原因となる価値判断を転倒させます

価値判断の転倒とは、ルサンチマンの原因となる価値とは別の価値を持ちだし、自分の優位性を示すことです

例えば、知識という別の価値を持ちだして、

「××という潮流を考えると会社の方針は古くさい」
とか
「組織長たるものは、・・・せねばならぬ」

と判断して、自分の方が優位であることを示します

また、経験という別の価値を持ちだして、

「私が若かったころは・・・であったのに」

と判断して、自分の方が優位であることを示し、ルサンチマンを解消するのです

持続性の高い幸福という選択

役職定年や定年によって失った地位財は取り戻す可能性はありません

それに引きずられては楽しく働くことは出来ません

失った地位財によって満足を得られる見込みがないのであるならきっぱりと諦めて、非地位財を追求することで得られる喜びを選択してはどうでしょうか

失った地位財の比較は所詮会社が作り上げた物差しです

永久に会社にいることはできないのですから、その物差しから離れて新しい物差しで人生を測るのです

特に非地位財はによる満足は持続性が高いので、より幸福な人生を送る見込みが高くなります

持続性の高い幸福を選ぶ選択をして非地位財の充実にシフトしていきます

つづく