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今日は清水克行さんの著書「室町は今日もハードボイルド 日本中世のアナーキーな世界」を紹介します

日本中世史には道徳的な人物がいない?

日本中世史の学者である著者は、小学校の道徳の教科書には日本中世(平安時代後期〜戦国時代)の歴史上人物が取り上げられていないことを知り、当時には道徳的な人物が少なかったと考えられていることに気づきます

しかし、それは現代人が考える常識や道徳を当てはめるからだと著者はいいます

中世は、強いリーダの元に社会が統御されておらず、異質で多様な価値観が拮抗して先行きが見えない物騒な時代でした

そんな時代に生きていた人たちにはその時代に通用する彼らなりの道理があって、それに従って行動していただけのことであり、その道理を現代の価値観で測るから、道徳的に感じないだけなのだそうです

かといって彼らの道理や行動から学ぶことがないかというとそうでもありません

上述の「中世の人たちが生きていた時代」は、グローバリゼーションの覆われた現代社会と酷似していないでしょうか

むしろ彼らの生き方の中から現代人が学ぶことがありそうなのです

「日本中世のアナーキーな世界には現代人がグローバル化された世界で生き抜くための知恵があるのではないか?」

そう思って、本書を手に取って読んで見ました

グローバリゼーションの世界で生き抜く知恵を室町時代から得る

その一例を本書から取り上げてみましょう

著者がインドの地方で遠距離夜行バスで移動した時に、山賊に不法な通行料を徴収されていたことをあげ、室町時代の瀬戸内海でも往復の安全な航行を確保するために通行証明兼用心棒代として海賊に支払っていたことを示します

瀬戸内海の有名な海賊として村上海賊がありますが、彼らには彼らの道理があって徴収していたそうです

その道理とは、この地域を通行するものはその地域の神々への捧げ物が必要であり、金品はそのために徴収するものであるというものです

現在の日本は外資によるグローバリゼーションの波に呑まれています

その一例が、GAFAが作り上げたエコシステムに組み込まれた日本の市場です

一見やられっぱなしの感がございますが、日本も室町時代の海賊やインドの山賊のように大きな声を発して立ち向かっても良いと思いました

中国の外資に屈しない姿に嫌厭する向きがございますが、私はそれもありかなと考え直すようになりました

読みやすい本です

本書を読むことでそのような知恵を日本中世の人たちから学びました

本書には室町時代の文献を引用しながら話を進めていますが、教授の書く文章だからといって難解ではありません

引用される文献も現代訳されていたり、コーヒーのSサイズがコーヒーショップによってまちまちであるといった身近な話題を導入部分に配置したりと、小説が如くスラスラと読むことができます

こういう先生に日本史を習えれば授業も楽しいだろうと思いました