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先の見通せない世の中になり、社員に自律や主体性を求める声が大きくなってきました
会社も昔のように時間をかけて社員を教育する余裕もなくなったのか、社員へ「後は自分で考えろ」と一方的に求めているだけのように見えます
社員に求める前に自律性を育む環境作りの方が大切だと思います
「この街を綺麗にするんだ」と思って、ニューヨークでゴミ拾いを始めても、そのそばからゴミを捨てられたり、翌日になったら更にゴミが増えているという状況では、自律の芽も摘まれてしまいます
このシリーズでは社員の自律を養う方法について考えてみたいと思います
社員の自律が求められる背景
先の見通せない
高齢化社会、急激な人口減、グローバル化、低成長時代
解決の糸口が探れない社会情勢に、企業も先の見通せない状況に置かれています
80年代まではマーケットやライバル企業といった目標となるものがあって、企業の成長も見込むことができていました
いわゆる右肩上がりの経済状況だったのです
先が見通せる状況においては、会社も長い目で見た投資もでき、時間をかけて社員を教育することもできました
先輩社員と同じようなアウトプットが出せなくても、教育という名目で大目に見られて育てられたものです
失敗をしながらもノウハウやスキルを獲得し、自律性や主体性といったものも合わせて身につけていきました
バブルの弾けた90年代以降、先の見通せない経済状況に突入してから、生産性向上やコスト削減で短期的な成果に繋がらないものは一切カットされ、教育も自己啓発が奨励されるようになりました
長らく一括採用、終身雇用、年功序列といった日本型雇用システムが使われてきましたが、この頃から中途採用といった即戦力の社員が採用されるようになり、国内外の状況変化に合わせた主体的な行動が、社員により強く求められるようになってきました
コンプライアンス
2000年前後に株主至上主義が日本経済に入ってから、企業は利益を創出し、株主に還元することが求められるようになりました
企業の判断基準が株価に反映されるか否かで判断されるようになり、例えばニュースリリースなども株価を意識するような形で行われるようになりました
この株価一辺倒の価値基準の行き過ぎた結果が、企業による不祥事に繋がります
自動車会社のリコール隠し、建築事務所による構造計算書偽造、粉飾決算などが2000年代初頭に続けざまに起こりました
企業における社会的責任が厳しく問われるようになり、コンプライアンスという言葉が使われ始めました
企業においては、法令遵守のチェック体制が組み込まれ、社内の規程や業務標準が整備されます
社員には教育が行われ、複雑な事務処理が増えることになります
業務の過程で不適切な会計処理が行われると、ペナルティが課せられるようになります
会社のためにやっていることが、いつの間にか社員への責任として問われるようになるのです
これもあまり行き過ぎると社員を萎縮させます
「これは法令違反ではないか」
と考えるだけで、行動を起こさなくなるという副作用が発生します
IFRSといった国際会計基準のように、新たな法令が次々と導入されていくため、コンプライアンスを守っていくことも難しくなります
仕舞いには、自分で考えて、自己責任で仕事を取り組むような姿勢が社員に求められるようになっていきます
80年代の会社生活を知っている私には、当時とは異質の自律性や主体性が求められている気がします
次は自律的な社員とは一体何かについてお話しします(つづく)
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