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前回に引き続き、本多静六の著書「私の財産告白」から現代のマネジメントにも通用する教えをご紹介します
人の意見をよく聴く
本多は人の意見を聴くことの大切さについても教えています
「要するに、上長者たるものは、絶えず業務上や研究上の意見を部下に求めることにし、採用しても、しなくても、どちらだって大差ないといった程度のものすら、できるだけ採用の形で取り入れることにしたい。これは本人にとっての大きな奨励ともなり、また将来本当に意義ある改善工夫の出現を待つ呼び水ともなるのである。いずれにしても人を使うには、人の意見を虚心坦懐に聞き取るだけの推量を、常に持ち合わせていなければならない。またそれを能う限りに実行に移すだけの積極味を常に持ち合わせていなければならない。」(出典:「私の財産告白」本多静六著)
仕事経験の豊富なマネジャーの方にとって部下の持ってくる意見は色褪せて見えることもあるでしょう
そんな意見でも部下にしてみれば「それが一番」と考えいているわけで、そのような意見を採用してくれることが部下にとって大きな励みとなると本多は教えています
部下の意見を採用するにあたって注意することを付け加えるとするならば、その部下の意見について「全くその通りだ」と感じ入る共感が必要でしょう
「そんなこと言われても、色褪せて見えるような意見に共感しろというのは無理だろう」と思われるかもしれません
確かにその通りでしょう
そこで私が共感するためのコツを教えます
それは、部下の考えた意見を根掘り葉掘りと傾聴してみることです
一見色褪せて見える意見であっても、部下が「一番」と考えた理由があるはずです
その意見を考えるに至った背景や経緯、その意見に対する部下の考え方、部下がなぜそれを一番と考えたかの理由などを根掘り葉掘り聴いているうちに、「なるほどそういうことだったのか」と腹落する瞬間が訪れます
すると部下の意見について「全くその通りだ」と感じ入る共感が生まれるのです
上長が共感すると、その反応は部下にも伝わり、部下は上長との情緒的なつながりを感じるようになります
この情緒的な繋がりは、人が組織を形成していくために必要な原動力です
仕事は周りの人の協力なしで成し遂げることはできません
人の繋がりをもたらし、一体感のある組織を築くためには、感情に働きかけ人を動かす共感が必要なのです
この共感によって「この人とは一緒にやっていける」と部下に感じさせ、部下と上長の間の信頼関係の構築にもつながります
任された部下は当事者意識を持ってすべて自己責任で捉えるようになり、自分で考えて物事に取り組むという姿勢を育てることにもつながります
ところが、そもそも部下から意見が上がってこないということもあるかもしれません
それについて本多は以下のような教えを説いています
「さらに師長たるものは、いつも決して無表情無愛想であってはならない。部下は常に、「上役の機嫌」といったことに心を配っているものだから、部下に対しては、なるべく柔らかく、笑いを忘れず、時にはユーモアたっぷりの口説で雑談の仲間入りなどもすべきである。いい話題がなかったら、「どうだね、子どもさんは皆元気かね」くらいに、くだけて出ることが大切である」(出典:「私の財産告白」本多静六著)
普段から意見をあげやすい雰囲気づくりが必要なんですね
上長に対する警戒心が除かれれば自ずと意見が上がるようになります
今回で「本多静六の教え:マネジャーに役立つマネジメント・ノウハウ集」を終了します
「私の財産告白」にはマネジャー以外の人にも役に立つ教えが書かれています
「上手な自説の述べ方」や「仕事の道楽化」といった働く人に役に立ちそうな教えがありますので、興味のある方は手に取って読んで下さい
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