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葉真中顕さんの「灼熱」を詠みました
600ページ以上ある大作を週末の二日で読み切ってしまいました
日本人同士が殺し合う勝ち負け抗争
戦前にブラジルに移住した20万人の日本人が、太平洋戦争の結末をめぐって、戦勝派と敗希派に分断し、同胞同士で憎しみ、殺し合う物語です
戦勝派は大本営が発表した日本の勝利を信じ、敗希派は連合国の情報を信じ日本の敗戦を認めます
そんな敗希派を戦勝派は排斥します
ラジオや新聞といった情報が入りにくい地方の殖民地ではさもあり何と思ったのですが、現代のようにネットで情報が流布する世の中でもあっても、同じなのかもしれません
「人は信じたいものを信じる」のです
そして自分たちにとって都合のよいフィクションを作り上げていくのです
人は意味のないことはしたくないので、「自分のやっていることには意味がある」と一度思い込み、その考えに囚われてしまうと、手がつけられません
「それは違う」と周りが諭しても聞く耳を持たなくなるのです
このような人の本性が変わらない限り、似たような悲劇は繰り返されるのでしょう
悲劇を繰り返さないために
フィクションは、人に信じる力を生み、多くの人を巻き込み、結束させ、集団の力を生みます
このフィクションにリアリズムが欠けてしまうと、ブラジルで起きた勝ち負け抗争のような悲劇をもたらします
理想やタテマエにこだわらず、現実を重視する態度を失わなければ、このような事態を避けることができます
この作品は史実に基づいて作られているそうで、私はそのような歴史を知りませんでした
歴史からしっかりと学ばなければならないと思わせる作品です