(1)では、役職定年や雇用延長などで第一線を退いた中高齢者は、その現状を受け入れられないと会社の中で楽しく働けないことに触れました

(2)では、楽しく働けない背景に地位財の喪失があり、それを克服する道として非地位財に着目することを提案しました

引き続き、このような働く人たちを対象にして、そういう方でも会社で楽しく働くことを考えてみたいと思います

自分からの解放

役職定年や雇用延長を迎えた中高齢者のうち、ルサンチマン(増悪やねたみ)を抱えてしまった人がそのルサンチマンを解消するために口にする

「××という潮流を考えると会社の方針は古くさい」
「組織長たるものは、・・・せねばならぬ」
「私が若かったころは・・・であったのに」

などの発言はご自身の優位性を示すこととなるため、胸がすく思いになることでしょう

しかし、ルサンチマンに根ざした発言であることを周りの人から見抜かれると、「残念な人」と思われかねません

果たしてそれで楽しく会社で働くことができるのでしょうか

役職定年や定年によって失った地位財に固執するのはやめて、前向きな人生を考えた方が健全だと思います

茂木健一郎さんは著書「IKIGAI」の中で、生き甲斐を感じるための秘訣として5本の柱を示しています

1. 小さく始めること ”Starting small”
2. 自分からの解放 ”Releasing yourself”
3. 調和との持続性 ”Harmony and substainability”
4. 小さな喜び ”The joy of little things”
5. <今ここ>にいること ”Being in the here and now”

2番目の柱「自分からの解放」にあるように、地位財を追い求めていたこれまでの自分を解放してあげるのです

そして非地位財(心、自由、安全)の中に自分が欲しているものを探し求めるのです

役職定年や雇用延長となって、面白みを感じない仕事をせざるを得ないこともあるでしょう

そんなときでも、その仕事をすることで心の豊かさを感じる事ができるように、その仕事に新しい意味づけをすることもできるのではないでしょうか

例えば、「その仕事を通じて、若手と成長の喜びを分かち合うことができる」といった具合にです

「素の自分」が素直な気持ちでそう思えるようになれば、その欲求に根ざした行動を起こすことは必ず幸せをもたらしますし、その幸せは持続します

社内隠居の勧め

楠木新さんは著書「定年後」の中で、「隠居とは自由意志に基づいた主体的な引退」としています

昔の人は、勤めや事業などの仕事を自分の意志に基づいて後継者に引き継ぎ、その後はノンビリと隠居生活を過ごしました

隠居する人は金、モノ、社会的地位のような世俗的なことから身を引き、好きな趣味を究めて心の豊かさを求める暮らしを志向したのです

しかし、現代の定年という制度はその年齢に達したら本人の意志に関わらず引退を迫ります

このことが多くの中高齢者を悩ませるのです

それであるなら自分の意志ではどうにもならない定年も主体的に捉えて自分の意志で引退を行い、来るべき定年を迎えてはどうかと思うのです

金、モノ、社会的地位のような世俗的なことから身を引いて、心、自由、健康を中心においた生き甲斐のある人生に切り替えるのです

私たちも会社の中で「社内隠居」してみたらどうかと思うのです

他者との比較ではなくそれ自体に価値があり、喜びに繋がり、役職定年や雇用延長であっても会社で楽しく働ける自分を作ろうではありませんか(完)