アイキャッチ画像:pixabay.com
Amazon Primeのウォッチリストにずっと入ったままだったのですが、時間ができたので映画「ホリディ」を観ました
ホリディはクリスマスホリディのことで、クリスマスに相応しく、心温まる映画です
4人の登場人物のラブストーリーですが、このうちの一人アイリスが終盤で私たちに大切なことを教えてくれます
それは対話の仕方です
アイリスの恋人ジャスパーは他の女性(サラ)と婚約し、そのショックを和らげようとロスで休暇を取ります
そこへロンドンからジャスパーが訪れ、よりを戻そうと持ちかけられます
アイリスは今でもジャスパーへの未練がありますが、彼女のある問いかけがきっかけとなり、彼との関係をきっぱり終わらせて、自分の人生を生きようと決心します
その二人の対話を取り上げてみましょう
ジャスパー(以下J):君がロンドンに戻ったら、俺と一緒にどこか遠くに逃亡しよう アイリス(以下I):本気で言っているの?そんな自由はないでしょ? J:あるとも。こうしてはるばるアメリカまで来て君に会いに来たじゃないか
ジャスパーに未練のあるアイリスは彼の言葉に喜びを感じますが、彼との対話で「ふと変だな」と気づき、次の重要な問いかけをします
I:今のは私の質問に対する答えになっていないわね
どこが答えになっていないのかというと、アイリスは「あなたは婚約者と別れられないでしょ?」という意味で「そんな自由はないでしょ?」と聞いたのですが、この質問に対して、ジャスパーは「あるとも。こうしてはるばるアメリカまで来て君に会いに来たじゃないか」と答えているのです
この答えは「(婚約者とは別れられないが)君には時々会える時間はあるよ」という意図を含む答えとアイリスは感じたのです
そして「私の質問に対する答えになっていない」ということに気づかされたのです
はじめにアイリスが問いかけた「そんな自由はないでしょ?」で使われている言葉に「自由」がありますが、アイリスは「自由」を「ジャスパーは公然と私と付き合える関係にある」という文脈で使っているのに対し、ジャスパーは「婚約者との生活はあるが自由になる時間はある」という文脈で「自由」という言葉を使っています
こちらの記事で、「対話の当事者同士の文脈が一致していないときは話しが通じない」というコミュニケーションの仕組みを解説しましたが、アイリスとジャスパーが使っている文脈もまさに一致しておらず、そのことにアイリスは気づいたのです
このように気づいたときは、「お互いに話が通じていないようですね」と認識を合わせることから始めると同じ記事で助言しましたが、これはアイリスの「私の質問に対する答えになっていない」という発言に相当します
この質問の後、会話は次のように続きます
I:あなたは、サラ(婚約者)と別れたの?それを伝えにここに来たの? J:俺は気持ちのが整理ができないんだ。その辺を分かってくれ。 I:じゃあ要するにこういうことかしら。サラとは今でも結婚する気でいる? J:あぁ。だが俺は・・・ I:なんてことなの(怒)
この対話によって、アイリスはジャスパーの文脈をはっきりと理解し、自分の文脈と一致していないことを悟ったのです
そして、既婚者との不倫関係を続けるという、恋人の不当な扱いにきっぱりと区切りをつけ、「今、あなたへの未練を完全に断ち切った」「自分の人生を生きなきゃ!あなたとの無関係の人生!」と決心するのです
もし、「今のは私の質問に対する答えになっていないわね」と確認を取らずにいたら、「自由」という言葉をお互いに自分の都合の良い文脈で捉えて、関係をずるずると続けていただしょう
アイリスはジャスパーに振り回される生活を続け、自分の人生を生きることができずにいたでしょう
アイリスの重要な問いかけが、彼との未練を断ち切って、自分の人生を生きようと決心することができたのです
そして、新しい人生を歩むことができたのです
対話をするときはおたがいの文脈を確認するということは大切で、その対話の実際をアイリスは教えてくれているのです
余談ですが・・・
欧米の人たちは、楽しそうに対話をしますね
映画を観ながらそんなことを感じました
日本の昭和世代の男性は「男は黙って・・・」となりがちで、とても彼らのように楽しく対話はできないなあとつくづく思いました