「贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる。」- サピエンス全史(上)p.117

今の時代はそうでもないと言われますが、私が就職した頃は車を所有することが夢でした。同期の連中が車を買い始めると「私もいつかは」と車雑誌を眺めたり、ディーラーを覗いたりします。自分が決めた車が納車されてからは、生活が変わります。一人でドライブしたり、友達と旅行に行ったりして、生活に豊かさを感じさせます。

一方で、車が生活必需品となると、様々な義務が生じます。ガソリンを入れたり、洗車したり、納税したり、車検を通したり、自動車保険を契約したり、駐車場代を払ったり、通行料を払ったり、駐車するところを探したり、いたずらされないように気を配ったり。経済的にもそうですが、精神的にもかなりの負担がかかります。このようにして、自分の生活に縛りが重なります。

それから20年経ち、引越と同時にマイカーを手放しました。引越先の駐車場が高額であること、子供も大きくなり家族で移動する機会が減ったこと、自宅周辺の公共交通機関が充実していることから、車を持つ意味がなくなったからです。これと同時に上述の義務からもすべて解放されました。経済的に助かったこと以上に、心理的な解放感が大きいです。義務から生じる心配事が一切なくなると気持ちが良いものです。

この頃から、引用にあるようなことを意識するようになりました。様々なものを所有することで豊かさを実感できる一方で、義務から生じる負担が確実に増えることにも目を向けることが大切でしょう。