先日、早とちりを避けるためには文脈を掴むことが大切であることをお話ししました
日本語は文脈依存的である
野内 良三さんの著書「「偶然」から読み解く日本文化」には、日本語が持つ性格について書かれています
野内さんは「日本語はコンテキスト(文脈)依存的言語である」と教えています
そのことを示す例をその著書から引用します
ぼくはウナギだ
シンプルな一文ですが、この文はその文脈によって次のような様々な意味に変化します(( )内が文脈です)
- ぼくはウナギにする(注文の伝達)
- ぼくはウナギを食べる(意思の確認)
- ぼくはウナギが好きだ(好き嫌いの表明)
- ぼくはウナギが苦手だ(好き嫌いの表明)
- ぼくはウナギを掴む(対象の選択)
- ぼくなウナギを釣る(対象の選択)
- ぼくはウナギのようにぬるぬるして捉えどころのない人間だ(自己紹介)
従って、
ぼくはウナギだ
という文章だけが伝えられても、文脈を共有していなければ発言者の意図を正しく理解できません
職場での起きる問題
このように発言者の意図が正しく伝わらないことは、職場の中でよく起きます
- メールや集会のような一方的な情報伝達
- その人となりを知らない経営者のメッセージ
前者は文脈を確認する手段(問い返し、問い直し)がないため、受け手の勝手な文脈によって解釈され、意図が正しく伝わりません
後者は前者と同様ですが、そもそも一度も会話をしたことのない経営者は、どんな嗜好があり、どういう価値観をもっているかなどの背景を知らないので、つかみどころがありません
発言したことが本音なのかどうなのかの判断がつかないこともあります(これは従業員意識調査でよく言われることです)
従って、折角トップが一生懸命にメッセージを伝えても、その熱量が伝わりにくいのです
不幸にも、上記のウナギの例のように、文脈によって様々な意味に変化しますので、受け手が選択する文脈によって、千差万別の解釈がなされて、経営者の意志決定のベクトルを合わせることを難しくします
また企業内の一体感を作ることが難しくなります
この日本語の特性を正しく理解したコミュニケーションを徹底しないと、組織風土改革を成し遂げることができないといって良いでしょう