前回は、社員への対処を行っても効果が出ないときは、社員の「困った問題」としてでなく、職場全体のシステムとして捉えるという視点をもつことで解決することがあるとして、システムズアプローチをご紹介しました
システムズアプローチでは、対象となるシステムの中で起きた問題の原因・症状に関する理論は、円環的因果律として捉えることもお話ししました
システムズアプローチの解決方法
ここではシステムズアプローチの解決方法についてお話しします
簡潔に申し上げると、上司と部下の間や、社員同士の間の行動よりも、それらがお互いに作用しあい、また影響を及ぼし合うパターンに焦点を当てます
よって結果よりもプロセスに注意を向けます
前回で取り上げた技術系社員の問題行動
- 技術論文が書けない
- 特許が書けない
について、上司と部下の間の相互作用に焦点を当てます
例えば、以下のような相互作用です
- 教育事務局が設定した技術論文のノルマが達成できない部下の代わりに、上司が事務局に代弁、言い訳する
- 先輩が技術論文を書かない姿を見て、自分も書かないことを正当化している
- 部下が上司のマイナスストロークを受けたがっている
1.ですが、代弁してしまうと、部下が考えることができない、自分で責任を取ることができない、謝ることができない社員となって、ますます何もやらなくなってしまいます
挙句の果てには、顧客の前で重大な問題を起こしてしまうかもしれません
2.の先輩が書かない例は、その行為が連鎖します
問題社員だけでなく、第二、第三の問題社員を生みます
3.のですが、マイナスストロークとは心理学の交流分析の用語で、ストロークとは「その人の存在や価値を認めるための言動や働きかけ」のことで我々に行動を起こさせる原動力のことです
ストロークにはプラスストロークとマイナスストロークがあり、プラスストロークは褒められたり、感謝されるような肯定的なもので、マイナスストロークは叱られたり、馬鹿にされたりする否定的なものです
マイナスストロークなんて受けたがらないと思われるでしょうが、「書けないなんてダメじゃないか」という上司の否定的な叱りであっても、自分の存在が認知されるため、あえてマイナスストロークを受けるために、あえて技術論文を書かないということも起きます
似たような話は子育てでも聞いたことがございますでしょう
それほどに「普段から上司は部下を認知していない」ということが部下が認識しているということになり、これは部下の問題ではなく、上司の問題として捉えても良い課題です
このように、上司と部下との間の相互作用に焦点を当てて、社員の課題を解決する方法が、システムズアプローチです
社員の教育をあげても一向に効果が上がらない、あるいは同じことの繰り返しという場合は、一度検討する価値があると思います