文脈とは「ある事柄の背景や周辺の状況」です

前回は、コミュニケーションを行う者同士が、文脈をあらかじめ共有しておくことが、その後に行われるコミュニケーションに齟齬を無くすためには大切であることをお話ししました

そして、その文脈を指示する例として

「君、あの件のことなんだが、ちょっといいかな」
「はい、あの件のことですね」

のように「あの件」という使い方を挙げました

「あの件」に関する文脈が二人の間で一致していれば良好なコミュニケーションが交わされるのですが、そうでないケースもあります

今回はそのことについてお話しします

「あの件」に関する文脈が一致しないケース

二人の間で文脈が一致する度合いを、下図の4種類に分けました

ケース1では、Aさんの「あの件」に関する文脈とBさんのそれがほぼ一致しているため、その後の会話で話しが通じます

ケース2では、「あの件」に関するAさんとBさんの文脈で一致することが少ないため、AさんがBさんと話していても、自分とは異なる認識をBさんがもっているので、話が通じません

ケース3では、Bさんは「あの件」に関する背景や状況をぼんやりとしか知らないので、Aさんが会話をしても、通じているのかどうか分かりません

ケース4では、AさんとBさんの両方とも「あの件」に関する背景と状況をぼんやりとしか知らないので、そのことについて会話をはじめてもどうして良いのか分かりません

文脈が一致しないときのコミュニケーションのコツ

ケース2から4のような場面に遭遇することは皆様の経験の中にもあると思います

ケース1のように「話が通じている」という実感がない場合は、まずケース2から4のどれにあてはまるかお考え下さい

その上で、ケースに応じて以下のように対処していきます

まずケース2では、「お互いに話が通じていないようですね」と認識を合わせます

そして、「どうして話しが通じないのでしょうか」ということにお互いに考えます

そうすれば、「あの件」に関する認識の違いが明らかになるので、お互いの文脈を合わせるように働きます

ケース3では、Bさんの文脈がぼんやりとしているので、Aさんが知っている「あの件」に関する背景や周辺の状況を丁寧に説明します

そしてお互いに共有する文脈を作り上げていきます

Bさんに説明しているうちに、Aさんが持っている文脈を修正した方がよいと気づくことがあるかもしれません

そのことが双方にとって妥当であれば修正し、お互いの文脈を合わせるように働かせます

ケース4では、お互いに「あの件」に関する文脈がぼんやりとしているので、二人で「あの件」に関する定義から始め、お互いの文脈を合わせるように働かせます

文脈あわせは風土を変える:その基本が傾聴

文脈が一致しないときのコミュニケーションのコツについてお話ししました

私たちが働く職場では、文脈が一致せず、人間関係がギクシャクしたり、他者や他部門からの協力が得られなかったり、予定通りのアウトプットを出せないことが結構な頻度であります

文脈を合わせれば、「なんだ、そんなことだったのか」ということも気づくことであっても、合わせずに放置してしまうことがあります

人は自分がもっている文脈が当たり前だろうと早合点して、相手がもっている文脈との一致点を確認しないからです

文脈の一致点のない中で、意思疎通を図ることは極めて困難だと分かっていても、文脈を合わせずにコミュニケーションを進めがちです

そうならないようにするためにも、相手が持つ文脈を知ることが必要です

そのための作法が傾聴です

「自分が持っている文脈は××だが、君の持っている文脈は何だろうか」という意識を常にもちづづけて、相手の文脈を気遣うコミュニケーションを心がければ、人間関係が円滑になり、協力関係の得やすくなります

そのことが、働きやすく、仕事を通じて楽しい人生を送ることに繋がります