生物もエントロピー増大法則に従うため、「秩序ある状態から無秩序の状態へ遷移する」というお話を以前しました
このエントロピー増大法則に逆らって、その個体を維持するため、生物は細胞を入れ替えており、生物個体で見ると同じ形の状態を保っています
これを「動的平衡」と言います
人間も同様に細胞を入れ替えており、1年も経つと人間はすっかり入れ替わっているそうです
それでも、人間の記憶が消えないのは、脳細胞が入れ替わっても細胞同士の関係が維持されているからだそうです
組織風土を継承するのは人間の社会性に基づく行動による
同じように、企業においても毎年新入社員を入社させて、社員を入れ替えているのですが、社員がすっかり変わっても企業文化と行った組織風土が継承されていることがあります
この仕組みに関することが、山口裕幸さんの著書「チームワークの心理学」に書かれていました
「フェスティンガーが社会的比較理論で指摘した人間の社会性に基づく行動」によるものだそうです
以下に引用します
人間は、自分がいかなる状況に身を置いているのか正しく把握して、適切な言動をとることに潜在的に動機づけされています。この動機づけが働いて、新たにチームに加わったメンバーは、直面している状況において、チームの一員としてとるべき判断と言動について絶えず学習を積み重ねていくことになります。しかも、もし、チームの規範に外れるような言動をとった場合には、他のメンバーが忠告やアドバイスを与えてくれたりもします。
山口裕幸著「チームワークの心理学」
このようにして組織で育まれてきた組織風土が一部の社員が入れ替わっても、企業が存続する限り、連綿と継承されていくことになります
継承して良いものと悪いもの
この人間がもつ社会性は、良い組織風土だけでなく、悪い組織風土も継承してしまいます
組織風土再生モデルレベル0にある、「縦割り組織」、「縄張り意識」、「慣例前例固執」、「官僚主義」、「硬直化」といった組織風土も継承されてしまうのです
よって、継承して良いものと悪いものを選別しなければなりません
継承して良いものとしては、時間を超え、状況にかかわらず、優れたパフォーマンスを導くものでしょう
例えば、「学習する風土」、「挑戦するマインド」と言ったものです
一方、環境変化に伴って通用しなくなった役割やプロセスは、柔軟に変容させる必要があります
組織風土再生モデルに従って、組織風土を段階的に再生させることが必要です
なお、ここで注意しなければならないことがあります
「変革」という価値観を盲目的に貫き、継承しなければならない良い組織風土も破壊してしまうことです
「革新的」という言葉は聞こえが良いので、「何でも変えることが良いことだ」と考えてしまいそうですが、大切に継承していくべき組織風土までも捨ててしまうような愚かなことはいけません