前回までは、「ポジション取りゲーム」という見えざる力のお話をしました

今回は、トラウマという見えざる力についてお話をしたいと思います

「見えないものを見る」力が見えざる力を生む

京都大学霊長類研究所の松沢哲郎教授のチンパンジーの研究によって、「見えないものを見る」能力について人間とチンパンジーの違いを示したことを以下の記事で紹介しました

人間の持つ「見えないものを見る」力は、時間という概念を獲得し、「過去」、「現在」、「未来」を認識します

そして、過去の思い出を意味づけることが見えざる力を生み、現在に不自由さを招くということが起きます

いわゆる「トラウマ」というものです

これは見えざる力の一つです

主演クリント・イーストウッドの映画「人生の特等席」を例にとって、この見えざる力を説明しましょう

主演クリント・イーストウッドの映画「人生の特等席」

この映画は、父娘の確執がテーマです

メジャーリーグのアトランタ・ブレーブスでスカウトマンをしているガス・ロベル(クリント・イーストウッド)は、ガスの一人娘である弁護士のミッキー(エイミー・アダムス)が6才の時に妻を亡くし、それ以降、ミッキーを親戚の家に預けたり、学校の寄宿舎で生活させて、一緒に暮らすことはありませんでした

ミッキーは親戚に預けた理由を何度もガスに聞いてきましたが、その度に答えをはぐらかされていたので、自分に何かの非があってガスに見捨てられたという思い出となります

このことが見えざる力として働き、「誰に対しても素直に心を開くことができない」という不自由さを持つようになり、日常生活の人間関係に影響を与えます

しかし、ガスがある事件をきっかけに引退を考えるようになり、6才の時に親戚に預けた理由は「自分が目を離した隙に、ミッキーが野球場で男にいたずらされそうになり、その男を気絶するまで自分が暴行したことがきっかけだった」と初めて打ち明けました

これを聞いたミッキーは、「親戚に預けられた」という思い出の意味づけを変えるようになります

「自分に非があったわけでは無いのだ」と

過去を変えることはできませんが、過去の意味づけを変える

この意味づけの変更によって、ミッキーは見えざる力からの自由を獲得したのです

過去を変えることはできませんが、過去の意味づけを変えることはできます

これによって見えざる力からの自由を獲得することができるのであるなら、過去の思い出を読み替えるのも良いかもしれません