早とちりをした経験を通じて、そのメカニズムを考えてみたいと思います

私の早とちり

先日、ナラティブ・アプローチのセミナーに参加しました

ナラティブ・アプローチが風土改革に活かせないかという動機でセミナーを受けました

テキストを眺めていると、ナラティブ・アプローチの説明の中に次の文章を見つけました

会社の物語から自分の物語へ、語り直し

私は、遣り甲斐に関する、ひとつの仮説を持っています

それは、「仕事を通じて自分の価値観を満たすことができれば、社員に遣り甲斐を持たせることができる」です

その様に考えている私が上にある文章を見つけたときに、「これだ!」と思ったのです

仕事を提供する会社の物語と自分の価値観に彩られた自分の物語を絡ませることが、ナラティブ・アプローチによってでき、風土改革に活かせそうだ、と思ったのです

そこで、授業が終わった後の先生に声をかけ、会社で風土改革を担当していると自己紹介し、先生に質問をしてみました

「テキストにある『会社の物語から自分の物語へ、語り直し』を風土改革で実践してみたいと思います。これに付け加える先生のお考えがございましたら、お聞かせ願えますか」

ところが、先生の答えは私の意に反して、以下のようでした

「この文章は、『早期退職のように不本意の中で会社を辞めなければならない人が、これまで会社中心であったあなたの物語を自分の物語へ語り直す』ということなのです」

完全に私の早とちりでした

早とちりが起きるメカニズム

言葉は、ある文脈を背景に語られます

ところが、その文脈が必ずしも話し手と聞き手の間で共有できないことがあります

すると、聞き手が話し手と異なる文脈を持ち出して言葉を解釈し、早とちりが起きます

特に、人は自分にとって都合の良い解釈をする(文脈を持ち出す)傾向があるので、早とちりが起きやすいものです

先生の文脈は

早期退職者を前提としており、これまでの会社の物語に異なる意味づけをする方法で元気づける

であり、キャリアカウンセリングの分野を想定した文脈だったのです

一方、私の文脈は

現職の社員を前提としており、普段は語られない会社の物語に着目し、自分の価値観を満たすことができるように仕事を意味づける方法で、遣り甲斐を持たせる

なのです

私は、先生とは異なる文脈を持ち出したために、早とちりをしたのです

これが早とちりの起きるメカニズムです

早とちりを防ぐために

私の場合は、個人的なものであり、「あっ、わたしの早とちりですね」で済むようなものです

ところが、その言葉が、多くの人々の早とちりを招くような場合は、看過できないことに発展することもあるでしょう

それを防ぐためにはお互いの文脈を確認し合うプロセスが必要です

これは、「問いかけ」や「問い直し」を使います

「あなたの言葉にある××は、どういうことですか」

「あなたの言葉を、わたしは××と理解したのですが、それでただしいですか」

といった投げかけを通じて文脈の確認するプロセスを設けて、早とちりを防ぐようにします

日本人は空気を読むことを重視し、このプロセスを省略しがちなので、そのことに注意するのが良いでしょう