先日、「共感とは何か」についてお話ししました

ところで、皆さんはアダム・スミスをご存じですよね

国富論の著者として学校で習った、あのアダム・スミスです

なぜここで彼を持ち出すのかというと、彼はもう一つの有名な著書「道徳感情論」で共感の重要性を示しているからなのです

人間が持つ共感する能力が社会調和を生み、秩序が保たれると教えているのです

そこで、今日は高哲夫さんの著書「アダム・スミス 競争と共感、そして自由な社会へ」で解説されている「共感がもたらす社会調和の仕組み」についてお話ししたいと思います

共感がもたらすもの:社会の調和

「共感がもたらす社会調和の仕組み」を下図に示しました

この図では、当事者の感情に観察者が共感するケースを想定しています

http://a1.sp2.acs.toshiba.co.jp/sites/Tsol-JU00/036fundamentals/syokubafudo/SiteAssets/DocLib1/共感/共感fig1.png

人間には「自己愛、他者への関心や思いやり」という本性が備わっています

ある出来事に遭遇した当事者は、「自分は正しい」という自己愛から激しく高ぶった感情を発します

人間本来の本性である「他者への関心や思いやり」をもつ観察者は、当事者の立場や背景などを想像しつつ、自身の経験も振り返り、その出来事からもたらされる当事者の感情が自分の反応と重なるとき、共感的激情が沸き起こります

その様子を今度は当事者が観察します

当事者は観察者の共感的激情を発している姿を観察することで、「私の気持ちがわかってくれた」と一体感を感じます

一方で、「自分の境遇は観察者の目にどう映っているのだろうか?」という関心の持ち方をします

これは自分の目線だけでなく、観察者の目線からも出来事を眺めることで、自分の境遇を公平な見地から眺めることとなります

「自分の反応は異様に映っているだろうか?」と感じると、「それほど大変なことではないけどね」といった言葉を添えて、当事者は観察者の同調を得られるレベルまで激情ぶりを引き下げるかもしれません

そのような当事者の振る舞いを見て、観察者自身も当事者との一体感を感じます

両者の感じた一体感は、快適な共感となって、親しい交わりとなります

この現象はあくまでも二人の間で現れますが、この情動の協和音化が社会の調和をもたらし、社会全体の維持に繋がるとスミスは説いています