今日は、コミュニケーションの仕組みを学び、そこから傾聴を上達させるヒントについて考えてみましょう
電子メールの仕組み
皆さんが普段使っている電子メールは、コンピュータを介して送受信されています
コンピュータは0と1からなる2進数のデータ列に変換しないと、通信することができませんので、皆さんがパソコンやスマホで打ち込んだメールは、コンピュータの中で2進数のデータ列に符号化して、相手のパソコンやスマホに届けられます
届いた2進数のデータ列は、皆さんが理解できるように復号化され、画面に表示されます
メールの中には、本文以外に、相手先のアドレス、自分のアドレス、送信日付、件名、添付ファイルなどがありますので、符号化するときにこれらの情報の順番とか、どういった情報なのかを示すタグなどをあらかじめ決めておかなければなりません
これを符号変換表と名付けるとするなら、この符号変換表は、メールを受信するパソコンの中にも組み込まれていないと、メールの送信者の意図する内容のメールで表示することができなくなります
最近はあまり見なくなりましたが、一昔前は、受信したメールが文字化けすることがありました
これは受信側で符号変換表による復号がうまくいっていないことが原因で起きます
人間のコミュニケーションの仕組み
この電子メールの符号変換表による符号化と復号化の仕組みは、人間の言葉を使ったコミュニケーションでも行われています
相手に伝えたいことがある人は、伝えたいことを心の中に思い浮かべたこと(表象)を言葉に変換します(符号化)
変換された言葉は、メッセージとして発信され、音声や手紙といった媒体を通して相手に伝えられます(伝達)
メッセージを受信した相手は、メッセージにある言葉から自分が理解できること(表象)に変換し(復号化)、発信者の意図を受け取ります
コミュニケーション・ロスが起きるとき
この言葉を使ったコミュニケーションでも、電子メールで使われる符号変換表が存在します
それは「言葉」と「その意味」からなる変換表で、発信者は自分の心の中に思い浮かべたことを「言葉」にするときに使い、受信者は、メッセージにある「言葉」から自分が理解できることに変換するときに使われます
発信者の表象と受信者の表象が一致していれば、コミュニケーションは正しく行われたといえます
しかし、受信者が使っている変換表が発信者のそれと異なると、受信者の表象が発信者の表象と一致せず、「そんなことを言った覚えはない」というコミュニケーション・ロスとなります
コミュニケーション・ロスをなくすために
これまで述べたコミュニケーションの仕組みを考えると、コミュニケーション・ロスをなくすためには、発信者と受信者の使っている変換表をなるべく一致させることになります
相手の人との付き合いが長くなると、「この状況で、この人が・・・と言うときは・・・ということだな」といったように、相手のコミュニケーションの取り方を学習して変換表をバージョンアップすることもそうでしょう
また、一緒に仕事をしていると、共通の知識や経験を得ることで、変換表に加わることもあります
仕事でなくても、家族として一緒に暮らしたり、何かしらの社会の属している構成員であれば、変換表の中に共通の項目が築かれます
私はIT系のプロジェクトマネージャでしたが、新しいプロジェクトを始めると用語表というものを作ります
様々な業種のお客様と仕事していると、その業界用語とか、お客様の社内用語が使われます
お客様との意思疎通をよくすることもプロジェクトの成功要因の一つなので、仕事で使われる言葉とその意味が一覧となった用語集を作り、自分の変換表の一つに付け加えるわけです
傾聴を上達させるために
傾聴を上達させるためには、このコミュニケーションで使われる変換表の存在を意識するとよいと思います
話し手の使っている言葉の意味は、自分の変換表にある言葉の意味とは異なるであろうという姿勢で、話し手が使った言葉の意味を傾聴で確認するのです
「その言葉の意味って、こういうことですか?」といた具合にです
自分は「成功」という言葉を、「経済的に満たされること」という意味で使うかもしれませんが、話し手が言った「成功」は「人に影響を与えること」という意味で使ったかもしれません
このようにして話し手の心の中でイメージしている表象を自分の心の中に再現する行為が傾聴と言えるかもしれません(つづく)