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今回は、課長対話学習会がどういった理論に基づく活動なのかについてお話しします
課長という仕事
課長の仕事はすべてをマニュアルに落とし込むことができません
その理由は「他者を通じて物事を成し遂げること」というマネージャの本質にあるからだと思います
「他者を通じて」ということは「人を扱う」という仕事であり、様々なタイプの人がいる限り、人を扱う作法をマニュアルとすることは難しいでしょう
結局、マニュアルなしのぶっつけ本番という経験から学ぶこととなります
しかし、これですと、一人の課長で経験できる量には限りがあるので、自ずと学びの量も限られます
そこで、似たような経験を持つ課長同士が集まって、互いの経験を紹介し、「自分がこの立場だったらこう判断する」と思考し、語ることで、自らの経験の質量を豊かにし、学びの量を増やすことが考えられます
SECIモデル
課長対話学習会では、他の課長の経験から効率的に学ぶ方法として、野中郁次郎・一橋大学名誉教授が編み出したSECIモデルを使っています
野中先生は「知の創造は暗黙知と形式知の相互作用によって為される」として、そのプロセスをSECIモデルで説明しました
wikipediaによると、SECIモデルで説明されるプロセスは以下のものがあります
- 共同化(Socialization)とは、組織内の個人、または小グループでの暗黙知の共有、およびそれを基にした新たな暗黙知の創造である。
- 表出化(Externalization)とは、各個人、小グループが有する暗黙知を形式知として洗い出すこと。
- 連結化(Combination)とは、洗い出された形式知を組み合わせ、それを基に新たな知識を創造することである。
- 内面化(Internalization)とは、新たに創造された知識を組織に広め、新たな暗黙知として習得することである。
この記事で課長対話学習会の進め方を紹介しましたが、この進め方をSECIモデルに当てはめて説明すると次のようになります
ディスクロージャは共同化(Socialization)に相当し、あるテーマ(例:評価のフィードバック方法)に関する課長同士の経験を追体験し、その中にある暗黙知を共有します
メンタリングは表出化(Externalization)に相当し、ディスクロージャで共有した暗黙知から、各自の気づきを言語化して形式知として昇華させ、ホワイトボードで共有します
この共有の中で、課長同士の対話も行われ、ホワイトボードに挙げられた形式知を組み合わせたり、再配置したりして新たな体系的な知識に変換される連結化(Combination)も行われます
さらに連結化(Combination)はラップアップでも行われます
連結化(Combination)された形式知は、課長が職場に持ち帰って実践し、新たな経験を身体化するのが内面化(Internalization)であり、新たな暗黙知を獲得します
それを次の課長対話学習会のリフレクションで振り返ったり、ディスクロージャで共同化(Socialization)します
このようにして、他の課長と協力し、暗黙知と形式知の相互作用の中から、マニュアルでは落とし込めない知識を学んでいきます
次回は、この課長対話学習会で使われている学習法を他の分野で応用することについてお話しします(つづく)