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前回は課長対話学習会でどんなことをやるのかお話ししました

こちらの記事では課長対話学習会がもたらす期待効果を以下のようにご説明しました

  1. 実務の中で現れる現実問題を直視したテーマを通じて、自分の職場、マネジメントの在り方をじっくり振り返り、課長が自分で考え、自分の言葉で意見をお互い述べることで、自身のマネジメントの立ち位置を見出し、マネジメントの意欲につながる
  2. 普段交流の少ない課長同士の仲間意識や一体感が得られる
  3. 自分の思いと他者の思い、自分の経験値と他者の経験値など、まだ感覚でしかわからないような暗黙知を共有することで、マニュアルでは落とし込めない知識を共有できる
  4. 課長が元気になることで職場も明るくなる

ここではこの会に参加した人たちのアンケート結果をご紹介して、この活動の効果を考察してみます

アンケート結果から見える効果

この会に参加した課長には毎回アンケートを取りました

この会の有益性を問う質問については、9割以上が好意的な回答をもらっており、回を重ねてもこの水準を維持しています

「参加者同士で仲間意識が持てたか」、「この会が自身のマネジメントを振り返るきっかけとなったか」、「今後のマネジメントの意欲につながることができたか」という質問に対しても、9割に近い好意的な回答をいただいています

具体的には、以下のようなコメントをもらっています

  • 他の部門と課題や悩みを共有でき、自分のメンタル的なフォローになった
  • 同じような悩みを抱えているんだなと共有できたことはプラスだった
  • 思ったよりフリーディスカッションが盛り上がる
  • このような会は継続してほしい。たまには飲み会も

以上のような結果から、期待効果の1.と2.は達成できています

また、期待効果の3.に関わるコメントとして以下のものがあります

  • 自分では気づかなかった考え方を聴くことができ、参考になる
  • 部下との接し方を考える良い機会になった
  • ベテラン課長の話ができて自分のできていない部分を気づく有意義な時間を過ごせた
  • 一つのテーマについて、異なる意見や考え方を聴くことができ、大変参考になった

このコメントからは、参加している課長がマニュアルでは落とし込めない暗黙知を感じ取り、それを職場で実践してみようという気持ちが読み取れます

期待効果の4.については、課長のアンケート結果からは汲み取ることができませんので、従業員意識調査のような他の手段で測ってみたいと思います

考察

ここからは、実際にやってみて分かったことについてお話しします

運営について

当初は1回2時間かけて実施していましたが、多忙な課長にとって、2時間は長いと感じるようです

一度に参加する課長の人数にもよるのですが、7人だと1時間では時間が足りません

80分で案内をして、10分の延長を見込んでおくので良いと思っています

人数規模は7人がちょうどよいと思います

あまり多いと、深みのある議論ができません

また、繰り返しになりますが、時間との関係で多くすることができません

経営幹部との橋渡し

この会では、課長が抱えている現実の課題が明らかとなります

この内容を経営幹部と共有することで、経営幹部は現場の生の声を聞くことができますし、経営幹部と課題を共有することで課題解決につなげることもできます

このような課題には、組織運営上の課題や課長のメンタル状況なども含まれます

傾聴技法の効果

アンケート結果が示すように、受講者同士の仲間意識が現れたり、共感の連鎖が起きたり、内省が促進されるのは、傾聴技法によるところが大きいと思います

アジェンダのリフレクション、ディスクロージャーで、心理的な安心感を与え、「何でも話していいのだ」という雰囲気を作り、悩みや各自の価値観を引き出しています

このことが同じ立場にある課長同士の共感を生み、「みんな同じなんだ」という一体感を与えます

このベースを作ったうえで、「メンタリング」でディスカッションを行うと、より前向きに物事を考えることができ、各自の意欲向上につながります

傾聴技法を使わずにディスカッションから始めると、一体感が築かれず、相互理解も得られないままとなり、議論が深まらないでしょう

「思ったよりフリーディスカッションが盛り上がる」という参加者のアンケートがこれを裏付けています

暗黙知の共有

管理業務はマニュアル化できないところがあります

課長同士の対話の中でも「試行錯誤の中で悩みながらやっている」「見よう見まねで体得している」という声がありました

課長対話学習会のように、自分の思いと他者の思い、自分の経験値と他人の経験値など、まだ感覚でしかわからないような暗黙知を共有し合い、ヒントを得るという手法は、マニュアルで落とし込めない知識を共有できる効果が見込めます

例えば「評価結果のフィードバックは人によって説明の仕方を変える」というコツがメンタリングの中で複数の課長から発言されましたが、このことはマニュアルに落とし込みづらく、発言した課長がおかれている状況、人となり、思いなど直接その課長の口から聞かないと伝わりません

この機会として課長対話学習会のメンタリングは有効であると考えています

よって、暗黙知の共有は、このような対話の場に参加することが大切になります

次回は、このような効果が得られる理論的な裏付けについてお話ししたいと思います(つづく)