アイキャッチ画像:pixabay.com
組織風土再生モデルで使われるプログラム
私が考案した組織風土再生モデルを使った組織風土改革のメニューには、組織風土のレベルに応じたオーダーメイドプログラムがあります
- レベル0の「沈黙の職場」で使われる「言える化」プログラム
- レベル1の「事務的な職場」で使われる「ワクワク化」プログラム
- レベル2の「熱意のある職場」で使われる「変わる化」プログラム
これらのプログラムでは、組織風土改革のために開発されたオリジナルメソッドで組み立てられています
どのオリジナルメソッドを使用するかは、その職場の組織風土の現状を把握した上で選択されるため、職場に応じたオーダーメイドのプログラムとなります
ここでは、このオーダーメイドプログラムで使われるオリジナルメソッドについてご紹介します
「言える化」で使われるオリジナルメソッド
言える化プログラムはレベル0の「沈黙の職場」で使われます
この事務的な職場の問題点が何であるか、このプログラムを使うことでどのように変わっていくかについてはこちらの記事に書かれています
沈黙の職場でのコミュニケーションは上位下達で行われており、職場は上からのプレッシャーを感じています
意見を上げると「じゃあ、お前やれ」となり、社員からの声は中々上がりにくなっています
このようなコミュニケーションのため、社員同士の関係性も希薄で孤立状態となっています
社員の意識の矛先は「以前はこうだったのに」というような過去との比較であり、問題の向き合い方もどこか他人事になっています
沈黙の職場の風土を改善するにはコミュニケーションを活性化させる言える化プログラムを適用します
「何を言ってもいいんだ」という心理的安心を作り出し、現場の社員から声が上がるようにします
すると社員同士は、孤立状態からお互いの状況を確認できる関係性に変わります
必要となるオリジナルメソッド
メソッド | 内容 | 参考記事 |
傾聴教育 | コミュニケーション方法を改善する | 「傾聴を学ぼう」 「コミュニケーションの仕組みから傾聴を考えてみましょう」 |
傾聴サロン | コミュニケーションを活性化させる | 「傾聴サロンに来ませんか」 |
全員面談 | 経営幹部が直接社員の聞き取りを行い、組織風土改革の本気度を示す | 「全員面談をやってみよう」 |
ご意見番制度 | 上司に言いづらい職場の課題を明らかにする | 「ご意見番制度」 |
対話会 | 目的に応じて組織を横断した対話を行う | 「対話会」 |
かわら版 | 組織風土改革活動を紹介する | 「啓蒙活動」 |
必要となる専門知識
「ワクワク化」で使われるオリジナルメソッド
ワクワク化プログラムはレベル1の「事務的な職場」で使われます
この事務的な職場の問題点が何であるか、このプログラムを使うことでどのように変わっていくかについてはこちらの記事に書かれています
「事務的な職場」を「熱意のある職場」に変えるには、社員1人ひとりが組織の中で自分の「遣り甲斐」を見出すことがポイントになります
遣り甲斐は社員に情熱をもたらし、それが熱意のある職場に変えるのです
また「事務的な職場」は仕事に楽しさがありません
心が満ち足りて、ワクワクするような、明るく愉快な気分を感じさせる楽しさを仕事に取り戻したのが「熱意のある職場」です
このプログラムには3つの柱があります
- 組織の価値観作り
- 信頼関係の構築
- 仕組み作り
「組織の価値観作り」では、共に生き、共に働く運命共同体という感覚を職場の社員たちが持つような取り組みを行います
「信頼関係の構築」では、お互いの人となりを理解しあって、信頼関係を築くようにします
「仕組みづくり」では社員の自律の芽を大きく成長させていくようなシステムを作ります
この3本柱の解説は「社員に一方的な自律を求めるのは、NYでゴミ拾いをさせるようなものです」も参考にしてください
組織の価値観作り
硬直した職場
事務的な職場では、会社の方針や目標に向けて進んでいるように見えますが、言われたこと以上のことをしないといった事務的な作業が目立ちます
仕事上の問題が発生しても、構造的な問題とか、他部門の責任と考え、他人事と捉えがちなので、問題への対処は消極的で、組織を跨った問題解決に結びつきにくいです
さらに、他者に対して特定の印象を与えるために自分あるいは自部門に関する情報を調整して伝えるようなことがあるため、問題の本質が掴みにくく、一緒になって問題を解決しようという活動に結びつきません
チャレンジより「現状維持」、或いは「できる範囲の改善」に留まりがちとなります
このように硬直した印象のある職場は、「自分中心の価値観」で判断していることが背景にあるので、「ものの見方や考え方」を変えさせ、凝結した観念を解凍するように仕掛けることがポイントとなります
自己中心の価値観から組織共通の価値観へ
普段あまり気にかけない企業理念やビジョンについて話し合う時間を取り、「そもそも我々がここに集まっている理由は何だろうか」といった存在の問いを立てて自部門の存在意義、自分たちが自分たちである意味を改めて問い直してみます
企業理念といったテーマでは堅苦しいと感じるようでしたら「私たちが楽しみながら働けるようになるには」といったテーマで話し合うのも良いでしょう
この話し合いは「自分たちはどのようにあるべきか」といった組織共通の価値観を考え直す機会を与えます
縦割り組織であることが経営課題であるなら、この作業を組織横断で問い直すと良いでしょう
異なる部門同士が共通の価値観で判断し行動できるようになり、縦割り組織の解消につながります
このように、一見自明とされていることを改めて問い直し、ものごとの本質を筋道立てて考えるような哲学的思考は、慣れ親しんだ環境下でものごとを判断してしまう習慣に揺さぶりを与え、変化に繋げるきっかけを生みます
そして、自分中心の価値観で判断してしまう組織風土を改め、組織共通の価値観を見出し、企業の目指すべき方向につながる実感を与えることができます
ワクワク感のある運命共同体へ
組織共通の価値観を作る作業は、参加した人たちをワクワクさせ、明るく愉快な気分を与え、仕事意欲を高めることに繋がります
この作業では、社員が「全くその通りだ」と共感することが大切です
共感によって社員たちは情緒的なつながりを感じ、一体感のある組織を形成するからです
このようにして硬直した状態にある事務的な職場に、共に生き、共に働く運命共同体という感覚を植え付けていきます
必要となるオリジナルメソッド
メソッド | 内容 | 参考記事 |
ビジョン作成 | 組織のビジョンを作成する | 「ビジョンを作ろう」 |
経営幹部メッセージ | 組織の方向性を示す | 「経営幹部によるメッセージ」 |
哲学カフェ | 組織の存在意義や価値観を問い直す | 「哲学カフェに来ませんか」 |
楽しい働き方改革 | 楽しく働ける仕事スタイルを作る | 「楽しい働き方改革をしませんか」 |
必要となる専門知識
共感、価値観、フィクション、一体感、哲学、意味、ベクトル、対話
信頼関係の構築
社員のモチベーションを芽生えさせる
組織の存在意義や価値観に共感した社員は、それが社員1人ひとりの行動に繋がるのでしょうか
組織の価値観を知ることで組織の目指す方向は理解するでしょうが、行動へ移すにはもう一工夫が必要でしょう
それは、組織が目指す方向と個人が成し遂げたい目標とを適合・調和させることです
個人には自分のWillがありますので、組織活動に関わることで、自分のWillを満たすことができると分かれば、社員に行動を起こす動因や動機を与えることとなります
さらに、社員に行動を引き起こさせるには、刺激となる誘因を与えます
それは「仕事の機会や役割を与える」という形で表されます
このように社員に動因と動機に誘因を与えることで、行動に向かうモチベーションが芽生えます
マネージャーに求められる役割
社員を行動に移すには、
- 動因と動機
- 誘因
を与える作業が必要となりますが、この作業を行うのは誰でしょうか
それは他ならぬマネージャーです
組織が目指す方向と個人が成し遂げたい目標とを適合・調和させることで社員に働く動因や動機を与え、行動を引き起こす刺激として仕事の機会や役割といった誘因を与えられるのはマネージャーしかいないのです
人は意味のない仕事をしたくありません
自分の仕事に意味を見出すことができれば、社員は情熱を持って仕事をするのです
しかしながら、事務的な職場にいる社員は、「いい仕事をしてもプラス評価を貰えない」という諦めがあったり、「目立つと返って仕事が増えたり、周りからの協力が得られずにマイナス評価を受けてしまう」と考え、せっかくのモチベーションが萎えてしまいがちです
これは周りの人を信用していないという信頼関係の問題が起因しています
また、マネージャーが組織が目指す方向と社員が成し遂げたい目標とを適合・調和させたいと思っても、社員がマネージャを信頼していないければ、自分のWillを打ち明けたりしないでしょう
よって、「この人となら一緒にやっていける」といった信頼関係に結ばれたもの同士の組織を作ることが必要となります
信頼関係を強めるために
信頼関係を築くには好意的な感情を育む施策が有効です
「相手もをもっとよく知りたい」という関心が信頼関係を強めます
信頼関係が築かれ、本音の話ができる間柄となれば、自分のWillを打ち明け、組織が目指す方向と個人が成し遂げたい目標とを適合・調和させることができるでしょう
また、問題が発生しても本質が掴みやすくなり、一緒になって問題を解決しようという行動に結びつくようになるでしょう
組織にこのような社員が占めるようになると職場は熱意を持ち、事務的な職場が解消されます
必要となるオリジナルメソッド
メソッド | 内容 | 参考記事 |
信頼関係構築 | 信頼関係を再構築する | 「働楽には信頼関係がある」「傾聴サロンに来ませんか」 |
1 on 1 | 社員の動機付けを行う | 「1 on 1」 |
必要となる専門知識
信頼関係、意味、自分事、自己開示と自己呈示の違い、遣り甲斐、1 on 1、モチベーション
仕組みづくり
自律的な行動をサポート
組織と社員の間のベクトルがあって、社員同士の信頼関係が構築されてくると社員の自律的な行動が見え始めてきます
この社員の自律的行動をサポートする仕組みを作ることも大切です
サポートされていることを実感すると、社員は心が満ち足りて、明るく愉快なワクワク感を持続することができます
(1)チームワーク
多くの仕事はチームワークの中で行われ、良好なチームワークは優れた成果を生み出します
チームワークに関する研究は随所で行われており、これらの研究成果を組織マネジメントに取り組むための材料は揃っています
チームワークを高めるような教育を行ったり、マネージャが適切に介入することはチームワークのレベルを上げるだけでなく、社員の自律的な行動をさらに高めます
(2)エスカレーション
意欲的な社員が組織の課題を解決しようと取り組んでも、持っている権限とスキルでは解決できないこともあります
このような課題を一人の社員が認識したレベルで放置しておくのではなく、組織として認識されることも必要です
そのためには組織の中で語り合って、共有し、組織の業務改題として認識するような仕組みが必要です
初めに課題を認識した組織では解決できないと判断されたものは会社の中でエスカレーションできる仕組みも必要でしょう
このような仕組みがあれば、仕事上に発見された課題を他人事とせずに、前向きに向き合うようになります
マネージャーをサポート
以上のような仕組みを作り、社員の自律の芽を大きく成長させていきます
このプログラムの肝はマネージャーとなります
マネージャーという役割は遣り甲斐はありますが、日々忙しく大変な仕事です
このようなマネージャー同士が集まって、日々直面する課題をテーマに話し合い、お互いのマネジメント力を磨いていくコミュニティを作ることも必要でしょう
テーマはマネジメント・スキルで述べられていることを取り上げると良いでしょう
「私だけが悩んでいるのではないんだ」というマネージャー同士の一体感を作ることで、多忙な中にも明日への意欲が生まれるようになります
マネージャー自身がワクワクすれば、社員にもその気分が伝播することでしょう
必要となるオリジナルメソッド
メソッド | 内容 | 参考記事 |
チームワーク | 優れた成果を出すチームワークを育てる | 「チームワーク」 |
カイゼン | 組織の改善意欲を高める | 「カイゼン」 |
マネージャー対話学習会 | マネージメント力を向上させる | 「課長対話学習会に来ませんか」 |
セルフケア | マネージャーのセルフケアを教育する | 「管理職こそ、セルフケアが必要」 |
必要となる専門知識
ワクワク化が与えるもの
ワクワク化は、ワクワクするような、明るく愉快な気分を感じさせ「事務的な職場」を「熱意のある職場」に変えるだけではありません
個人の成し遂げたい目標が、組織の目指す方向と適合・調和しているので、組織の価値観を浸透させることに繋がります
このような状態は社員全員の向かうべき方向(ベクトル)が合っている状態であるため、社員一丸となった組織力を活かすこともできます
また社員一人ひとりのモチベーションの向上にも繋がります
これがワクワク化の狙いです
「変わる化」で使われるオリジナルメソッド
変わる化プログラムはレベル2の「熱気のある職場」で使われます
この事務的な職場の問題点が何であるか、このプログラムを使うことでどのように変わっていくかについてはこちらの記事に書かれています
「長い物には巻かれろ」「郷に入っては郷に従う」といったことわざにあるように、組織に入るものはその組織の色に染まることをよしとするような処世術が日本にはあります
このように日本人は組織のもつ価値観に染まりやすい環境にあります
これが行き過ぎると、上司の意向に逆らうことができない組織風土が作り上げられ、社員による不正会計問題といったコンプライアンス上の経営課題に発展します
そこまで行かなくても、「慣例前例固執」、「官僚主義」、「硬直化」のようにせっかく「熱意のある職場」のレベルにある職場が「事務的な職場」にレベルダウンしてしまいます
組織の特定の価値観に偏りすぎずに「考えの違う人に寛容である」、「異なる価値観を受け入れる」といった多様性に富む風土を作ることが大切です
「熱気のある職場」を「変革し続ける職場」に変えるには、過去の慣習や固定観念に囚われず、常に業務の目的・方法・必要性を問い直し、多様な考え方を組織の中に取り込みながら、めまぐるしく変わる外部環境の変化をいち早く察知して自己再生し続けることがポイントになります
また、企業や組織は社会の中での存在意義を確かなものとするために、新たな価値を創造しつづけること求められます
違う考えを持つ人に寛容であり、色々な考えを持つ人たちから刺激を受けながら、異なるもの同士の新たな組み合わせを考える本質的な対話を促し、新たな価値を創造できるような風土にすることも大切です
必要となるオリジナルメソッド
メソッド | 内容 | 参考記事 |
変わる化の4ステップ | 外部環境変化への対応力をつける | 「働楽な在宅勤務を職場で考えよう」 |
哲学カフェ | ものごとの本質を知る力をつけ、価値を生み出すきっかけを作る | 「哲学カフェに来ませんか」 |
多様性教育 | 自分らしく振る舞うことから多様性を受け入れる態度を学ぶ | 「なあなあに慣れている日本人は多様性の実践が難しい」 |
必要となる専門知識
オーダーメイドプログラム共通のオリジナルメソッド
組織風土のレベルに応じた3つのプログラムは組織管理へのアプローチが中心となりますが、組織風土改革には個人へのアプローチも必要となります
個人へのアプローチでは、モチベーション理論やカウンセリング心理学の専門知識が必要となるので、これらの理論の教育を受けたトレーナーによって行われます
必要となるオリジナルメソッド
メソッド | 内容 | 参考記事 |
カウンセリング | 組織の一員として必要な対人関係スキルの開発や意識改革を行う | – |
キャリアサポート | 社員の抱える発達課題に対処する | 「見えざる力化の自由」「(中高齢者限定)社内隠居の勧め」 |