YouTubeで「おしえてイチロー先生」(SMBC日興證券)という番組があります

子供や大人の質問に対してイチローが答える、そんな番組です

イチローへの質問の中で「他人に嫌われるのは怖くないか?」という質問があります

映像はこちら

この質問に対して、イチローは

「他人に嫌われるのは大好き」

と答えます

さらに

「その人たちは僕に対するエネルギーは半端ないでしょ。(自分に対して)興味がないことは一番辛い。僕にとっては。無関心が一番辛い。」

と付け加えます

他人に嫌われるのが好きな理由

この動画では、このやり取りだけです

意外な答えに面白さはありますが、イチローに向けられる「嫌い」というエネルギーを、なぜイチローが好きなのかという理由が語られていないので、今ひとつ消化不良です

なので、私がその場にいたら、

「他人がイチローさんに向けるエネルギ−は、イチローさんにとってどんな意味を持っているのですか」

と訊くでしょう

しかし、その答えはないので、ここでは想像してみます

イチローは野球人というプロフェッショナルです

「バッティングという勝負を通して、如何に投手を打ち負かすか」あるいは「野手として、相手の攻撃を如何に防御するか」ということを究めた人です

これを究めることで、相手チームには相当嫌われるプレイヤーとなります

しかし平凡なプレイヤーであれば、関心を示されず、そこそこの対応をされてしまいます

これは敵のチームだけでなく、競い合っているチームメイトについても同じでしょう

このことを考えると、イチローにとって「嫌われる」ということは、「自分の野球人としての価値を証明していることと一致する」からではないでしょうか

なので、イチローは「嫌われるのは大好き」と言っているのだろうと思います

プロフェッショナルとしての価値を高めるためには、「(競争相手である)他人に嫌われる」ことが大切な要素の一つなのでしょう

組織の異物になる

野球は個人プレイの側面と、チームプレイの側面があります

チームプレイの側面で、他人から嫌われることは議論の余地があると思います

組織で働いている人々にとっては、組織のメンバーと一緒に仕事を行うことが多いでしょうから、「他人から嫌われるのは大好き」というイチローの価値観は受け入れにくいかもしれません

しかしながら、嫌われることを恐れて、組織の中の対話を避けることも問題だと思います

特に、組織風土が硬直している状態(組織風土再生モデルレベル0レベル1)では、対話を避けることが更なる硬直化を招きますので、あまり薦められません

ある場面においては、イチローのようなプロフェッショナル意識をもって、嫌われても自分の意見を通すことが必要なこともあります

それでも自己否定的な認知を持っているために自己表現ができない人は、自分の意見を通すことが難しいかもしれません

また、組織の中に自己主張が強すぎて相手を抑え込んでしまうような言動をする人がいると、意見を通すことに躊躇するかもしれません

場合によっては、アサーション(自己主張訓練)が必要なこともあるでしょう

しかし、例え「組織の異物」と見られることはあっても、自分のプロフェッショナル意識から「私の意見は正しい」と思うことがあったら、嫌われることを恐れずに自分の意見を通す勇気も必要です

それは自分の働く職場の組織風土を変えることに繋がり、自分の働きやすさに繋がることですから

そして、それが自分らしさの発露にもなることですから